呉の山火事資料
第065回国会 地方行政委員会消防に関する小委員会
第065回国会 地方行政委員会消防に関する小委員会 第3号 昭和四十六年五月十八日(火曜日) 午前十時三十七分開議 出席小委員 小委員長 古屋 亨君 大西 正男君 高鳥 修君 中村 弘海君 野呂 恭一君 安田 貴六君 綿貫 民輔君 中井徳次郎君 山本弥之助君 桑名 義治君 門司 亮君 出席政府委員 消防庁長官 降矢 敬義君 消防庁次長 皆川 迪夫君 小委員外の出席者 地方行政委員長 菅 太郎君 地方行政委員 中山 正暉君 地方行政委員 村田敬次郎君 地方行政委員 山口 鶴男君 林野庁指導部長 海法 正昌君 建設省住宅局建 築指導課長 前川 喜寛君 自治省財政局交 付税課長 横手 正君 消防庁総務課長 宇土 條治君 消防庁予防課長 永瀬 章君 消防庁防災管理 官 古郡 良秀君 地方行政委員会 調査室長 日原 正雄君 ――――――――――――― ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 消防に関する件 ――――◇――――― ○古屋小委員長 これより地方行政委員会消防に関する小委員会を開会いたします。 消防に関する件について調査を進めます。 呉市における林野火災及び千葉市における田畑百貨店の火災等について、消防庁当局から説明を求めます。宇土総務課長。 ○宇土説明員 お手元に差し上げております資料の中で、まず第一番目に説明をさせていただきたいのは、「昭和四十四年における損害保険会社等の損益計算に関する調」でございます。 --中略-- ○古屋小委員長 古郡調査官。 ○古郡説明員 ただいま説明いたしました前に資料がございますが、呉市山林火災の概要につきまして御説明申し上げたいと思います。 去る四月二十七日十一時十分ごろ、呉市の広町町田門の口大張矢山山林、門の口水路災害復旧工事現場付近より出火いたしまして、死者十八人という多くの犠牲者を出しました火災でございますが、当日の気象条件は、十一時十分ごろでございますが、晴天で東南東の風、五・八メートルでございます。しかし、最大瞬間風速といたしましては十一・四メートルが記録されておりますし、また現場付近では約十五メートルくらいの風もあっただろうというように推定されております。湿度は約一九%ということでございまして、非常に乾操している状況でございました。こういう状況でございまして、四月二十五日の十三時四十五分火災警報が発令されておりますが、当日も引き続き発令されておった最中でございました。 出火原因といたしましては、水路災害復旧工事現場付近におきまして、たまたま昼食用の湯わかしをしておりましたところ、近くのがけの枯れ草にこのたき火が移りまして、さらに山林に延焼したものでございます。 被害の状況といたしましては、類焼いたしました林野が、国有林で百十五ヘクタール、市有林で八十五ヘクタール、私有林で百四十ヘクタール、合計三百四十ヘクタールと相なっております。 死者は十八人でございますが、これはすべて呉市の消防局職員でございまして、うち一人は重傷を負いましたが、後に五月一日に病院で死亡しております。 消防活動の状況といたしましては、十一時十分ごろに出火しておりますが、覚知いたしましたのは十一時十八分でございまして、その方法は一一九番に電話がありまして、覚知いたしたわけでございます。それで東消防署からは直ちに第一消防隊員十六名を現地に派遣いたしました。 この先発隊が出ましたとき、すでに三ヘクタールは焼いておりまして、なお拡大中でございました。呉市消防局におきましては、さらに増援隊を派遣し、延べ百八台の消防ポンプ自動車を出動させ、職員八十四人、団員四百十人を災害現場に搬送して消火活動に従事させました。 なお、二十七日の十五時に呉市の東消防署に災害対策本部を設置しております。 広島県知事は、火災の延焼拡大のおそれがありますものですから、呉市長からの要請に基づきまして自衛隊に出動を要請しております。 なお、この際広島県ではヘリコプター一機を民間航空会社とのチャーター契約に基づきまして出動させておりますが、このヘリコプターは空中からの消火活動と偵察を行なっております。 なお、出動いたしました人員につきましては、呉市消防局職員のほか消防団員、広島市からの消防局職員、陸上自衛隊員、海上自衛隊員、警察官、営林署職員等、二十七日におきましては千五百余名、二十八日におきましては千九百余名が出動しておりました。 鎮火いたしましたのは二十八日の十一時十分でございますが、たまたま十時半ごろから雨が降りまして、この降雨と消火活動と相まちまして消火状態になったわけでございます。 なお、先ほど申し上げました十八人の殉職者の状況でございますが、東第一小隊が先発してまいりましたが、この第一小隊から応援要請がございまして、東消防署長は第二小隊を現場に急行さしたわけでございます。この第二小隊が火点東側に延焼することを防止するため、北の峰の稜線を下りまして、消火活動に当たっておりました。しかしながら、東南東の強い風がありまして、十四時三十分ごろに休耕中の草生地に飛び火しております。この状況を見まして指揮に当たっておりました東消防署長は、直ちに第二小隊に対しまして退避を指示しておりますが、応答がございませんでした。その直後火勢は非常に拡大いたしまして、この第二小隊が火煙に包まれ、猛煙に囲まれたために、隊員を動員いたしまして、救助活動を行ないましたところが、救助することができずに十六時二分に十三人、十七時二分に四人が遺体として発見されております。なお、残りの一人は十六時十九分に重傷を負いましたが、救助され病院に搬送されたところ、五月一日病院で死亡しております。 以上が呉市林野火災の概況でございます。 なお、その最後から二枚目に、昭和四十六年の一月から三月までの火災概況がございます。 簡単に御説明申し上げますが、出火件数につきましては、この三カ月間で約二万四千件ございます。これは昨年の二万四千九百七十九件に比べ九百七十件ほど減の戦後第二位の火災件数でございます。その内訳は、建物火災が一万三千件、林野火災が三千六百余件、車両火災が千百余件、こういうふうになっております。特に車両火災のほかはすべて減になっております。 この状況につきましては、昨年の気象条件と本年度の気象条件が若干違うようでございまして、湿度それから降雨日数等も本年度のほうがこの三カ月間やや多いようでございます。こういうような状況があるかと思いますけれども、昨年よりは若干全体的には減っております。 なお、焼損のむね数につきましては一万八千余件でございまして、昨年度に比べますと七百十九件減になっております。 罹災世帯数につきましては一万四千余件でございますが、昨年度より二十九件ふえております。これは戦後最高でございまして、過去の最大は昨年の一万三千九百八十三件でございます。 それから焼損面積につきましては、建物が八十四万平米余でございます。林野が六十四万二千九百アール余でございます。いずれも昨年に比べまして減っております。建物につきましては十二万二千平方メートル、林野につきましては二十四万四千アール減っております。 損害額につきましても、二百五十二億一千余万円でございますが、昨年に比べまして三十一億八千二百八十六万余円減っております。 死者数は六百二十一人でございまして、昨年に比べまして一人増加しております。これも戦後最高でございまして、過去は昨年の六百二十名が最高でございます。 負傷者数は二千八百九十七人でございますが、昨年より二百九十八人減っております。 以上でございます。 ○永瀬説明員 お手元の資料の三枚目にことしになりましてからのおもな火災のごく簡単な概要を記してございますが、これは寿司由楼で起きました和歌浦の一月二日の火災以降のおもなものをごく簡単に概要だけをここに記してございますが、説明を省略させていただきます。 --中略-- ○古屋小委員長 桑名君。 ○桑名小委員 広島県の呉の山火事の問題でございますが、昭和四十一年の山火事の発生件数が約四千三百三十六件、そして死者が三十五名、昨年度の四十五年度が一年間の林野火災が七千六十三件、死者が六十六名、こういうふうに四年前と昨年度の比較をしてみますと、件数におきましても死者におきましても非常に増大をしているわけです。このいわゆる山火事における死者が増大をしているというその原因というのは、どこにあるとお考えなんですか。それをまず最初にお尋ねをしておきたいと思います。 ○降矢政府委員 ただいま御指摘がありましたように、林野火災は、件数あるいは損害、死者の数におきましても、一般の建物火災に比べまして非常にふえる割合が高うございます。これは火災の原因そのものが、しばしばいわれますように、たばこ、たき火等が中心でございまして、しかもそれが大体、御案内のとおり、三、四、五月というところに非常に集中してまいります。この林野火災につきまして、今度の呉の場合もそうでございますが、一般に地形あるいは林相あるいは気候、風速、こういうものが一緒になってかなり拡大する傾向にございます。そこで、この火災の件数の増加とともに、かなり規模が大きくなる傾向にございまして、したがいまして死者の増加というものも、それに伴って、どうしても危険が大きくなるに伴ってふえてくるということだろうと思います。またかなり山に入る機会もだんだん多くなってまいりまして、今回の場合にも、あるいは山火事の場合にも、かなり煙あるいは火炎が非常に早いという状況から、火炎に巻かれて死亡するという状況が多うございますので、一般的傾向としては、御指摘のように、全体として火災件数がたいへん多くなってきておるということが、何と申しましても最大の原因のように考えております。 ○桑名小委員 いまの消防庁長官の説明ではどうも納得しがたいわけです。と申しますのは、まず第一の原因は、いわゆる消防団員の老齢化という問題があげられるのではないか。たとえば今回の呉の場合でも、死者の中で四十代、五十代の方が非常に多い。しかも十二名の方が――今度は定員の問題でございますが、定員の問題でも、呉の場合は条例で定めている定員は二百二十六名、ところが現在は百九十六名しかいなかった。十六名の死者の中で約十二名が当直明けであった。こういうふうな実情を考えてみますと、疲労と老齢化とそれからまたいわゆる整備が非常に不十分であった。集約しますと、この三つがおもな原因ではなかろうかと私は思うわけでございます。 そこで、お尋ねを特にしておきたいのは、昭和四十四年の十一月の消防審議会の答申の中に、火たたきあるいは覆土のような人海戦術は農村部の人口減などから効果をあげなくなっているので、空中消火機器、消防薬剤、万能トラクターあるいは小型ポンプなどの近代装備を使用、開発し、訓練につとめるよう提案をしているわけです。こういった問題に対して、いままで林野火災についてどのような対策を立ててきたか、現実にどういう経過をたどりながら充実を期してきたか、こういう具体的な事例に入ってまいりますと、私は非常に心細いのではないかと思う。消防庁としては、この四十四年の十一月の答申を受けてから、どういうふうな対策を立ててきたかということが一つと、それから職員の老齢化に対しまして消防庁としてはどのようないわゆる対策を立てていこうとされているのか。あるいは先日東京都のほうもずっと回って見たわけでございますが、最近は消防団員なんというのは非常に少なくなった。これは、過疎地域におきましてはもちろん若い人が少ないということは一応納得ができるわけでございますけれども、しかし、過密都市においても消防署員になる人が非常に少なくなった。この定員をどういうふうにして確保していくかということがやはりまた今後の消防問題としては非常に大きな比重を占めていくのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございますが、こういった点について今後どういうふうな施策をされようとしているのか、この点について伺っておきたいと思います。 ○降矢政府委員 第一点についてでありますが、消防審議会の答申にあります資機材の整備充実でございます。これは消防庁としては、この答申を受けまして、四十五年度から、資機材の点では、林野火災用の消防無線あるいは防火水槽というものを新しく補助対象に取り上げますとともに、林野工作車、一般にウニモクと称されておるものでございますが、こういう車両を新しく補助対象に加えることにいたしました。また府県につきましては、林野火災対策の資機材も含めまして、特に交付税の中で資機材備蓄ということで府県の基準財政需要額の中に二百万を四十五年度に算入することにいたしまして、四十六年度はさらにそれを三百万に引き上げるということを措置しておるわけでございます。 しかしながら、結局、この答申にもありますとおり、一つは空中消火というものをどう開発していくかということでございます。この点につきましては、四十四年度から科学技術庁の特別調整費をもとにいたしまして、ヘリコプターによる空中消火の研究を消防庁の研究所が中心になって林野庁その他防衛庁とも協力して研究に着手いたしまして、昨年には久住高原におきまして消火の実験をやりました。その結果、ある程度間接消火といいますか、防火帯を設置するために薬剤を散布するということについてはかなりの効果をあげております。しかしながら、散布する機械あるいは散布薬剤の貯蔵あるいはそれをさらに実戦において用いる場合の薬剤を混合する機械の開発、あるいはヘリコプターからどういうふうな状況にまいたほうが一番効果があるかという点については、さらに研究を進める必要がありますので、本年度におきましてもその研究を継続することにしておるわけでございます。 また、その点についてさらに消防研究所としては、やはり先ほどの老齢化あるいは人員不足ということはある程度機械によってカバーしなければなりませんので、ここに小型軽量ポンプというのが答申の中に書いてありますが、現在でありますと、御案内のとおり、可搬式ポンプというのが一番小さいポンプでありまして、その一番小さいものでも大体八十キロ前後ございます。もちろんこれは二人でかついで搬送できるわけでありますが、ここに書いてありますように、たとえば二十五キロとかその前後の、もう少し軽いポンプの開発を考え、またこれを搬送するために、いわゆるスクランブラーというオートバイのようなものを一緒に開発して山林火災に使わなければならないということで、消防研究所におきましてもその点の開発に着手しておるところでございます。 いずれにいたしましても、御指摘のように、人員の少ない、あるいは山火事でありますと相当の人員を要するときに、初期消火体制として、あるいはある程度拡大した場合に防火帯を早急につくるという場合に、薬剤によってどういうふうなやり方が一番適当であるかという意味の空中消火につきましては、さらに今後研究を進めなければならないというふうに考えておるわけであります。 定員の確保の問題につきましては、先般もいろいろ御議論がございましたが、一面機械化による消防力の充実ということと相まって、消防職員自体につきましては、やはり処遇の改善あるいは厚生施設の充実というようなことを通じ、また消防団員につきましても、過疎地域につきましてはかなり減少しておりますし、あるいはおりましても、御案内のとおり、出かせぎ等によりましてある期間不在になりますので、そういうところにつきましては小型ポンプ車を部落単位に配するというようなことで、機械化と相まって考えていかなければならぬというふうなことでわれわれ施策を進めてまいる所存でございます。 ○桑名小委員 いろいろと人員の不足分については機械化で補っていきたい、それから山林火災については鋭意機械化の方向で解消していきたい、まとめますとこのようなお話でございますが、そういうふうにしてやってきたにしては呉の消火体制というものは非常にお粗末であった、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。今回のこの資料によりますと、一応百八台の消防車が出動をした、こういうふうになっておりますし、それからヘリコプターを一台チャーターした、この程度にすぎないわけでございます。そうしますと、この中には山林工作車とか、そういう山林用の消防の機具というものの出動は全然ないわけです。この呉の問題の前に、京都でも四人の消防署員の方がなくなったという事例があるわけであります。それで、この山林火災のこわさというものは皆さま方も十分に御存じのはずでございます。あるいは山林火災というものは、初期消火というものを怠ったならば、非常におそろしい結果が出てくるということももうすでに御存じのとおりでございます。そういった事柄に対応できる施設の立ちおくれが今回の呉の惨事を巻き起こしたというふうに言わざるを得ないわけでございます。アメリカやカナダあたりにおきましては、非常に大型な消防体制が組まれていると言われているわけでございますし、はたして消防庁が考えていらっしゃる森林火災消火に対してどの程度の実効をあげることができるかを考えると、私は非常にお寒い感じがするわけでございます。 こういったいわゆる大きなブロック別にでもこういう山林消火に対する整備を計画的に推進をしていく必要があるのではないか、こういうふうに私は思うわけでありますが、そういった体制なりあるいは考え方が現在あるかどうか、その点をもう一度伺っておきたいと思います。 ○降矢政府委員 こういう山火事等が広域化するのに対しまして、その地域の市町村だけでこれを防備するということは、火事が大きくなれば非常に無理でございます。ブロック単位に持っていくかどうかということは別にいたしまして、少なくとも府県がどういうような任務を負うかということをまず考えてみる必要がありまして、すでに広島県におきましてはヘリコプターをチャーターすると同時に、ヘリポートあるいはそういうものを何地点かかなりつくっておりますし、それに必要な消火薬剤等を備蓄してあります。またこの報告にもありますとおり、自衛隊の出動を願うような場合が山林火災についてはしばしばございますので、その際に必要な資機材、チェーンソーその他につきましては、県において備蓄しておるというかっこうでございまして、そういう市町村ごとの体制とともに、広域的なものに処理するために県がそういうことをすでに着手しております。先ほど申し上げましたように、われわれのほうでも、やはり県が資材を備蓄するということで、府県の任務というものをある程度明確にしたらどうだろうかという気がいたしておるわけでございます。もとより実動活動というものは市町村消防が中心でありますけれども、それに必要な、いわゆる広域的に対処するような山火事あるいはコンビナートという問題になりますと、やはり府県がある程度資機材を備蓄するということを考えるべきものというふうに考えまして、本年から資機材のセンターの補助金として二カ所分計上した次第であります。 それ以上大きなものとして、ただいま御指摘ございました空中消火というようなことになりますと、それは現在府県でも持っておりますし、あるいは東京でもヘリコプターを持ちまして、実際の小さな火災や高尾の火災についてはヘリコプターで消火したという事例もございますが、もっと大きなものになりますと、たとえば御引用になりましたアメリカの場合には、御案内のとおり、連邦の農林省といいますか、そういうものがアメリカ全州を二分して空中森林消防隊というものを持っておるようでありますし、そういうものになりますと、私どもももう少し想を練っていかなければならぬ問題だろうと思っております。 そういう意味におきまして、少なくとも現在私たちは府県の任務をもう少し明確にして、そして少なくとも市町村消防が活動するときに必要な、あるいは常時は必要でありませんが、少なくともこういう山火事のような広域的なものになりました場合には、どうしても必要な資機材の備蓄というようなものをまず考えたい。それをさらにどういうふうに前進させるかということについては、もう少し検討させていただきたいと思っております。 ○桑名小委員 長官の言うお話もわからないことはないわけでございますけれども、いまお話がありましたように、昭和三十六年の京都の高雄、この場合は消防団員、署員が四名死んでおりますし、今回の場合には特に十六名という非常な悲惨な状態を起こしたわけでございます。そういった意味から、確かに各市町村段階あるいは県の段階で消防の薬品の備蓄やあるいは消防機器の充実をはかっていかなければならないのは、これは当然なことでございますが、それと同時に、もう二度とこういうふうな悲惨な事故を起こさないためにも、もう一歩踏み込んだ、大型な山林火災に対する施設というものを考えていかなければならないのじゃないか、こういうふうにしみじみと思うわけでございます。しかも、最近の状況を見てみますと、レジャーなどが非常に盛んで、山林に入る人数も多くなってまいりましたし、それに従いまして、たばこ、たき火の不始末といったことで、いままでの自然発火ということよりも一そう危険が増大をしておるわけであります。そして、最近は、自然保護という立場からもいろいろと論議が続けられている実情の中で、この山林火災を起こさないことは当然なことでございますけれども、起こった場合に即刻これに対応できる体制をこしらえておくということが、これは自然保護という立場からも、人命救助という立場からも最も大事なことではなかろうか、私はこういうふうに思うわけでございます。 先ほどから多少、アメリカあるいはカナダあるいはフランスのこういった問題を私は提起をいたしましたが、こういう設備を整える、こういう体制をこしらえるまでには、まだまだ着手の段階ではなくして検討の段階である、こういう実情でございますか。 ○降矢政府委員 空中消火の段階は、消防研究所において四十四年から二年間やりましたが、まだ、それを実用化する、これならば絶対だいじょうぶだというような研究のところまで到達しておりませんので、そういう意味では、いまお話しになられたとおりでございますけれども、研究所としても、今年さらに研究を続けて、すみやかに実用化するということでこの研究を完成するように努力するということになっておりますので、御了承願いたいと思います。 ○桑名小委員 実際に機械化というものは、長官はそういうふうにおっしゃっておられますけれども、非常におくれているというのが実情だろうと思います。今回の場合でも、可搬式消火器だけであった、あるいはヘリコプター一台をチャーターしただけであって、可搬式の場合でも、水の問題がすぐに問題になるわけでありますが、今回の場合でも、水を取りにいくまでには二十キロも離れておった、こういうふうなことを考えますと、せっかく消防車が行っても、水を補給するためには非常に時間を食うということで手間どって、ついにはこういうふうな火災になってしまったということも一応考えられるわけでございますので、この点については、財政的な問題がからんで、消防庁単独ではこの問題と取り組むにはあまりにもたいへんな問題だろうとは思います。そこで、消防庁と同時に、林野庁としてはどのように考えられておるか、この点をお聞きをしておきたいのです。 ○海法説明員 ただいま御指摘ございましたが、林野庁といたしましては、消防庁とお話し合いをいたしまして、予防措置につきまして林野庁としては考えていく、消防措置につきましては消防庁のほうにお願いをするということで、お話をしているところでございます。 従来、予防措置につきましては、パンフレット、リーフレットなり、それから立て看板というようなものをやってまいったわけでございますけれども、最近、特にレジャーブームと申しますか、山に入る方が非常に多くなってきた、また道路網が整備をされまして、これによってまた山に入る方が多くなったということで、ただいままでは森林保険特別会計と国有林野特別会計でこの予防の措置を講じてきておったわけでございますが、四十五年度から一般会計においても予算を取りましてこれに対処してまいる。特に広くこの林野火災というものを知っていただかなければならぬということでございますので、広報活動につきましては、駅また車内、全国的に見ていただけるように広報の範囲をうんと広げてまいってきているところでございます。今後この点につきましてもなお一そう努力をしてまいりたいと思います。 ○降矢政府委員 ただいま御指摘のありました水の問題は、全くそのとおりでございます。私たちとしては、一つは林野用の防火水槽につきまして特別に項目をつくって補助対象にしておりますが、そのほかに、自然水利の問題、あるいは防火水槽につきましても、たとえば林野工作車には組み立て式の防火水槽も積み込んでいくというようなことで、林野工作車については、そういうものを含めたものをセットで林野工作車として補助をするというようなことで、自然水利のほかに、特別に防火水槽につきましても設置を促進して、特に補助対象にしているところでございます。 ○桑名小委員 そうすると、林野庁といたしましては、予防措置を一応考えているだけで、消火措置は全然考えない、こういう立場ですか。 ○海法説明員 消火の問題につきましては、先ほどもお話し申し上げましたように、一応林野庁としては予防対策というものに力を入れる。それで、実際に火災が起きました場合は、国有林野に消防の自衛組織をつくってございますので、そういう面から御協力を申し上げるというふうにいたしております。山林火災が起きました場合の消火体制は、国有林においてはとってございます。 ○桑名小委員 それでは、この消防施設の充実については、財政的な問題が大きくからんでまいりますので、消防庁としてはこれ以上突っ込んで質疑するのも酷だと思いますが、いずれにしましても、お金がない、お金がないだけで済まされる問題ではございませんので、強力にこういう林野火災に対する対策を計画的に推進をしていただくことを要望して、この問題を終わりたいと思います。 --中略-- ○古屋小委員長 門司君。 ○門司小委員 一、二お聞きしておきたいと思いますが、一つは林野庁に聞いておきたいのですが、山火事は防止しようとするとなかなかむずかしい作業であることは、われわれもよく知っております。一番予防策としては、防火帯をどうするかということであります。いわゆる山の尾根に防火帯をまず一応ずっととるということは、昔からそういうことになっておる。そこで問題になりますのは、一体これについてどういう処置をとられているかということ、それから大体防火帯の一つの区画というものはどのくらいの面積を一体定められているかということ、林野庁に何かこういうものの規定があるなら、この際教えていただきたいと思います。 ○海法説明員 通常、防火線と申しますが、防火樹帯それから防火保安林というようなものが山火事の場合に非常に有効であるということは確かでございます。それで、制度的に防火保安林というものがございまして、これはいわゆる難燃性の木で二十メートルくらいの幅の樹林を残すわけでございますが、これが一つ制度としてあるわけでございます。現実に防火保安林というものが全国で四百余町歩ぐらいございます。それから防火線、防火樹帯につきましては、国有林におきましては尾根筋の所要なところに防火線をつくりまして、また防火樹帯につきましては、これも伐採の場合にこういう樹帯を残すというふうに計画しております。ただ、防火樹帯につきましては制度的なものはございませんが、山火事というものは特に乾燥期におきましては非常にあぶないものでございますので、多発地帯その他については今後ともこういうものを残すように指導してまいりたいと思います。 ただ、民有林の場合におきましては、ことに所有が零細であるということが一つございます。二十メートルなり四十メートルなりの幅のものを残すということは、これは非経済林になるわけでございますので、現実の問題としてはなかなかむずかしいものでございますけれども、火災頻発地帯その他については極力指導してまいりたいと考えます。 ○門司小委員 一向わからぬのですが、山火事には二つありまして、山林だけが焼けるのと、民家を襲うという非常に危険な状態が発生してくるのと二つあるのです。そこで、一つの対策としては、民家と山林との間にどれだけの防火帯を設けるか、どのくらいあいておれば一応火は防げるか。それから山林と山林の間に大体どのくらいの広さ――それだけみなあいてもいいというわけではありません、木を植えなければなりません、山林の効果というものを考えないわけにいかない。これと火災というものとのかね合わせであって、どのくらいの防火帯を設けておけばよろしいかということはどこかに基準がなければならぬと思うのです。いまのように国有林はこうだああだという、国有林のほうについてはいろいろの問題はあるでしょうけれども、問題はやはり民有林です。そこで、そういうほんとうの防火帯がやはり必要だ。たとえば二十メートルなら二十メートルを取ってしまう、火災のときにはここで押えるんだというような計画性のものがあって、そしてそれが民有林であった場合には、この地域を買い上げるというようなことまで国がやる必要がやはりあるのではないか。たいしたお金じゃないのであります。山に木がはえていれば木の値段は非常に高いのでありますけれども、地価は非常に安いのであって、それほど大きな国家の負担にはならないと思う。やはりそういうことは考えられなければならない。 私がなぜそういうことを言うかといいますと、そういうものが山火事を押える一つの大きな心理的な影響を持つのであります。皆さんのほうでいま立てられておる、火の用心をしてくれとか、たばこはやめてくれということは、刺激を与える、注意を促すという意味だけれども、山の外から見ても、これは防火帯だ、あそこの間で火事になったときには押えるんだという印象を国民に与えれば、自然とたばこの吸いがらを捨てるとか、あるいはたき火を粗末にするというような心理がなくなると思うのです。火災というものはそういうふうに心理現象が非常に大きいのです。その面から見ても、前に申し上げましたように、ある程度の区画を限った一つの計画性というものがなければならないと思うのです。焼けたあとでああでもないこうでもない、水が近いとか遠いとか言っても間に合わない。水というものは最初からあるところとないところときまっているんだ。 もう一つ考えなければならないことは、これは震災のときなどを特にじっくり考えなければならぬ、山火事のときには特に考えなければならない。空気が乾燥しているとか、いろいろな理屈はございますけれども、火災の熱から来る異常な気象が発生することは容易に考えられることであります。したがって、普通の常識では考えられないことが大きな広い火災になってくるとあるわけであります。呉の火災もそういうことだと思うのです。専門家の消防隊が中に入っているのですから、十八人というような大きなまとまったような死者を出すようなことは普通ならなかったと思うのです。やはり異常気象が発生して、風の方向がどういうふうに変わったかというものがそこにあると思うのです。たつまきみたいなものが起こりがちであります。そういう場合には北風が急に南になってみたり、あるいは東になるというようなことは往々にしてあることである。火災を考える場合には常識的に考えなければならぬことだ。そういう面に対する配慮がなされないでおいて、あとからああでもないこうでもないと言っても、いまの話を聞いていると、みな言いわけみたいなものです。言いわけしたって、人間の死んだのは返ってこないですよ。 林野庁はどうなんです。いま申し上げたようなことはきわめて簡単にできるとは私どもは考えておりませんけれども、方向としては一つの山塊なら山塊についてはこのくらいの防火帯を設けておけばよろしいのだ、これにはこういうものが必要だというようなことが考えられませんか。 ○海法説明員 どのくらいあったら火がとまるかということは、これは地形にもよりますけれども、大体防火帯、防火線の幅は二十メートルないし四十メートルというものを、つくります場合にはつくります。また防火樹林を残す場合には、大体そのくらいの幅のものでつくっております。 それからまた今後地方におきまして森林計画を県で立てます段階におきまして、先ほど申し上げましたような理由で、民有林につきましては非経済林をつくるということはなかなかむずかしいと思いますけれども、森林の火災の多発地帯については極力そういうものを考えていくというように指導してまいりたいと考えております。 ○門司小委員 私は、指導するというよりも、山林火災についてはもう少し積極的な姿勢を持ってもらいたい。ことに最近における山林は、終戦後から見れば、幾らか山の形をしていて――山の形というのは、私は木のはえていることを言うのでありますが、山林として価値のあるような形になりつつあります。でありますから、いまのうちに早く予防対策を立てておく必要がありはしないかということです。そうしないと、日本の山林資源が事実上はだんだん失なわれつつあるということは何といっても言えることであって、こういう問題はやはり建設省、林野庁では考えてもらいたい。 --中略-- |
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