エコラベリングについての情報です。
(1997年時点のものです)
 
1.緒言
1−1 文書
この文書は4巻からなり、各巻には認証過程で各当事者への指針として用いられる情報が収集されている。
・一般情報
・第T巻:持続可能な森林経営に関する基準と指標
・第U巻:現地調査におけるデータの収集と分析の方法
・第V巻:専門家チームへの指標評価指針
・第W巻:階層化されたプロセスに用いるためのガイド
この文書はAシリーズとして引用すべきであるが、特に天然林に用いられるように考えている。人工林についての文書(Hutan Tanaman Industri)はBシリーズとして覚えておくべきであり、これはCIとして部落有林(Hutan Rakyat)及びC2として個人的に経営されている部落有林(Hutan Rakyat yang dikelola secara pribadi)が対象となる。
 
1−2 文書の用い方
 この文書は読者が容易に作成できる方法で企画されている。第T巻は読者として、査定者と専門家チームの両方を規定している。第U巻は査定者に関連が多く、第V巻と第W巻は専門家チームを対象に考えている。
(1)一般情報:この節には、連続している4巻への紹介部分として有用な一般情報が含まれている。本節では、認証プロセスとプロセスそのものを 構成する各要素を説明している。国レベルの認証プロセスにおけるLEI(インドネシアエコラベリング協会)、LEIの位置づけに関する一般情報を検討して おり、それによって、コンセッション所有者の経営区(経営単位あるいは単位組織であるが、以下森林経営区又はやんに経営区と呼ぶ))を評価し、認証する。
(2)第T巻ではそれぞれ異なる2つの分野について説明している。それを組み合わせて、持続可能な森林経営に関する基準と指標が具体的に提示される。
(3)第V巻では、査定者が現地調査を行う場合に用いる指針についても議論し、説明している。
(4)第W巻では、専門家チームのプロセス、認証基準及び職能などについて詳しく述べている。現地調査の結果を評価する場合の手順についても詳述している。
(5)第W巻では、評価プロセス、階層化された解析プロセスで用いる方法を説明している。本書では、さらに認証プロセスにおけるAHPの位置づけ及びこの方法を適用する場合に必要な技術的留意事項について検討している。
 この文書はまた、認証プロセスにおいて他の関係者が全体のプロセスを理解できるように、加えて一つの特定区域で詳細な知識が得られるように設計されている。
 
2.インドネシアエコラベル
2−1 インドネシアエコラベリング協会(LEI)
 この協会は非営利組織であり、その義務は(1)持続可能な森林経営の実践に当たってインドネシア政府からの援助条件を強化すること。(2)持 続可能な森林経営の選択に当たっては先行例から学んだ方法で実行すること。及び(3)他国から認知が得られるようエコラベル(意味は後述)認証プロセスを 定めることである。
 エコラベルについて言えば、インドネシア国内で認証機構を設け、森林経営区の実績を評価するという共通のビジョンとアイデアが具体化されるこ とが望まれている。このことはその目的が有効な認証プロセスにある場合には、唯一合意した持続可能な森林経営に関する基準と指標にとって必要な条件であ る。
 LEIは、堅実な環境管理の持続性を援助するという約束のもとに設けられている。従って、この協会の氏名は、環境に配慮し、エコロジーに関し て敏感な消費者が求めている情報を正確に伝えることである。協会は、認証プロセスが客観的に正確であるよう、独立した一つの機関として設計されており、 従って、利害とは関係のない第三の当事者として行動する。
 
2−2 LEIの原則
LEIは次の原則に従って活動を行う。
・信頼できる正確な情報が得られるように消費者のために行動すること。
・独立した当事者であること。
・評価プロセスと認証プロセスにおいて第三の当事者であること。
・利害とは関係のないこと。
・非営利組織であること。
・評価プロセスと認証プロセスとは分離していること。
・その認証プロセスについて他国との相互承認が得られるよう継続性を持つこと。・各ステップにおいて明快性を確保すること。
・認証プロセス中に他の当事者と協議すること。
・認証プロセスは自由意志に基づいて行うこと。
・認証プロセスは持続可能な森林経営と連結して業績を上げるための奨励策として開発されること。
 
2−3 LEIの認証プロセス
LEIの機能は、認証プロセスをより正確で完全なものとすることで消費者を保護することである。このことは認証を行うプロセスと現地調査を行う プロセスと分離することでなされる。LEIはまた、その認証において考えられる最良の方法で森林経営が実行されるよう、査定者を監視し、啓発する努力もす る。
 
2−4 持続可能な森林経営に関するLEIの原則と基準及びこれらのITTO並びにFSCの原則と基準との関係
 LEIが持続可能な森林経営(SFM)を確かめるために用いる原則と基準は、ITTO及びFSC(付属表参照)の原則と基準に基づいて設けら れている。LEIは認証プロセスを管理するだけでなく、評価の知見に基づいて判断を下すことになるが、評価指標のシステムと開発は、経営区の重要な構成要 素に基づいてなされていることが絶対に必要である。
LEIの原則と基準は、持続可能な森林経営のかなり規定的な原則と基準よりも異なった側面で見る必要がある。従って、ITTO及びFSCのそれらと異なったシステムが必要であるということになる。
 しかしながら、本質的にLEIの用いる原則と基準は、ITTOやFSCのものとそう顕著に相違しているわけではない。LEIもまた、それぞれ の持続可能な森林経営方針(インドネシアの林業政策を含めて)を考慮に入れている。結局、これがインドネシアで広く行き渡っている条件と調整したシステム ということになった。
 
3.エコラベル概念の開発
3−1 エコラベル概念
 エコラベリングについては、様々な定義がある。一般にエコラベリングは、生産物にラベル又はシンボルをつけたものと定義される。このラベル は、その生産物の精算プロセスにおいて、特別な環境基準を満たしているということを消費者に知らせる一つの方法である。言い換えれば、エコラベルの目的 は、生産プロセスにおける各種の環境について評価が行われたことを消費者に知らせることにあるが、それによって、消費者が一般には入手できない情報が得ら れることになる。このことによって消費者は環境に優しい生産物*1を選択できる。
 エコラベリングの各種の考え方によって、生産物認証方式(信頼でき、偏りがなく、且つ独立した)を創出する努力がなされてきたが、それによって、消費者は環境ラベリングを全面的に信頼することが出来る。基本的には次の2つのカテゴリーがある。
(1)ライフサイクル生産プロセスの評価
生産物の環境に及ぼす影響(投入の段階から含む)を考慮に入れた総合的考え;これは『ゆりかごから墓場まで方式』として知られている。
(2)単一課題の評価
生産物の内容を構成する1つ以上の要素(生産物の生産プロセスにおける一次点で)環境に及ぼす影響だけを考慮に入れた考え方;木材の認証はこのカテゴリーに属するが、それは評価が森林経営方式(木材製品を生産する)においてのみ行われるからである。
 
3−2 木材の認証
 木材の認証は一つのプロセスであり、それによって、木材製品の生産地についての情報が得られる。一方において、この認証によって経営区は持続 可能な森林経営の原則を実施することの重要さが分かる。他方、これは環境への影響を示すものである。木材認証プロセスには、2つの主要な要素がある。
(1)森林の経営の質についての認証
(2)生産プロセスの質についての認証
木材認証プロセスの枠組み
次の文書において論じる認証プロセスは、持続可能な森林経営に対して経営区の認証プロセスのみに言及している。
 
4.持続可能な森林経営に対する経営区の認証枠組み
4−1 評価プロセスと認証プロセスの方法
認証のために経営区はその実績評価の機構と手順を通じて3つに篩分けされる。この篩分けは、より効果的なプロセスにするよう設計されている。例えば、経営区が最初の篩分けに失敗すると、その経営区は自動的に第2段階に進む必要はなくなる。
 
4−1−1 最初の篩分け:文書の評価
 経営区からの文書は、この段階で査定される。この文書の主たるカテゴリーは次の3つである。
(1)基本となる文書
(2)計画設定文書
(3)実施文書
 さらなる評価については、その関連する文書の全てをLEIに引き渡さなければならない。LEIは、その文書を徹底的に分析し、研究するために 専門家会議を指名する。この会議は、経営区が第2の篩分けの段階(最終段階)に進むことが出来るかどうかを決定することになる。さらに、どのようにしてこ の文書が分析され、研究されるかの詳細については、第T巻を見ていただきたい。
 
4−1−2 第2の篩分け:現地評価
 現地の検査は、LEIではなく査定者によって行われる。LEIによって定められた基準と指標がこの第2の篩分けの指針として用いられている。 この篩分けは2つの目的を持っており、先ず現状が報告されているように正確であるかを立証し、ついで経営区が実際にSFMの原則に従って作業しているかを 調査する。現地調査は査定者が必要なデータを収集する方法や手段を案出するまで行われる。査定者は、報告する文書において専門家会議への判断材料としての 情報やその他の提言(専門家によって是非認識される必要があると考えられる)を供与することが出来る。
現地検査の結果はLEIが指名した専門家や地方の利害関係者からなる専門家会議によって分析される。ついでこの会議では、経営区が実際にSFMを適用したかどうか、また、経営区が認証されるかどうかについて推薦が行われる。
 
4−1−3 第3の篩分け:一般市民との協議
 この段階で、LEIは一般市民と協議するための集会を2回開催するが、一般市民が関係する森林でのコンセッション所有者の経営区の存在に関心 を示していることは明らかである。経営区の認証について、先ず一般市民が経営区をどのように見ているかという問題が含まれているので、このプロセスは必要 と思われる。この協議プロセスは次の2つの部分からなる。
(1)政府、民間部門、学術機関及びNGOsの代表者によるエコラベル・コミュニケーション・フォーラム
(2)地方紙での公示:LEIは市民からの書簡によるコメントを受けている。一般 市民との協議を受けて、LEIの専門家会議の推薦が棄却されると、第3の会議は設けられることになる。
 意志決定プロセスの各段階において、会議のメンバーは階層化された解析プロセスを適用することによって明快な方法で作業することが出来る。この方法によって各当事者はコンセンサスを得るために寄与することが出来よう。
 全体プロセスは、表3−2に図示する通りである。また各当事者の機能と責任は、図3−3に示す通りである。
 
 
 スの機関
 査定者は、現地検査とデータ評価のプロセスに直接関与する会社の社員である。経営区の業績を立証するのが査定者の責任である。この段階で収集 されたデータは、経営区の認証について推薦できるかどうかを考えるために、専門家チームのメンバーへの判断材料として役立つことになる。現地検査が行われ る前に、LEIは査定会社の義務遂行に当たって、その客観性を査定する。認証される経営区はまた査定者の候補を推薦することが出来る。この場合LEIは推 薦された査定者が客観的資質を備えているかどうかを確かめることになる。客観性のある査定者の基準は、次の通りである。
(1)インドネシアで操業している査定会社として全国基準会議(DSN)によって公認されていること
(2)認証される経営区に直接的にも間接的にも所属していないこと(利害について対立が起きないように)
(3)査定者チームのメンバーは、直接的にもその他の方法でも、またいかなる形でも経営区からの支払いを受けてはならない。
(4)査定者チームのメンバーは、認証される経営区において既得の利益を得てはならないこと。
(5)査定者チームのメンバーは、客観的評価を確保するために高度に完全な状態を保つこと。
(6)査定者チームのメンバーは、現地検査においてそれぞれの責任で調査を実施できる技術を有すること。
(7)査定者チームのメンバーは、LEIの研究調査の方法論及び指針の枠組みについて十分な理解を持つこと。
 
5−2 LEIの専門家会議
 LEIの専門家会議は、有能して信頼できる個人からなるチームであり、各人の義務は認証プロセスの各段階での全ての必要条件を実際満たしているかどうか、経営区の認証を与えることが出来るか(どのような認証基準で)どうかを決定する。
 認証プロセスの第1段階についての専門家会議は、経営区から提出された文書を分析するメンバーからなる。このメンバーは、評価される文書の課題についての専門家でなくてはならない。
 認証プロセスの第2段階についての専門家会議は、経営区のコンセッションがある区域の環境と人々の状態の評定及び課題に精通している専門家からなる。
 認証プロセスの第3段階についての専門家会議は、会議Uのメンバー及び地方集落を代表する人々と経営区の業績について詳細に観察している人々からなる。
 各構成員の必要条件についての更なる詳細は、第V巻で述べている。
 
5−3 一般市民
 認証プロセスにおける一般市民の関与は、そのプロセスが明快な方法で行われるために欠かすことが出来ない。”一般市民”は査定される経営区の 状態及び業績に関心を持つ個人と定義されている。LEIは一般大衆のアイデア、情報及び示唆などについて耳を傾け、これによって経営区で経営される森林の 状態に関する意見が汲み取られる。査定者が認証プロセスを行う場合、あるいは直接LEIへ書き送る場合、さらにはコミュニケーション・フォーラムが開催さ れる場合に市民の参加が求められる。
 
5−4 経営区のコンセッション設定地の周辺の部落
 森林内や森林周辺の集落は、経営区のコンセッションが設定された森林やその周辺の村に居住する人々のグループである。経営区の評価プロセスにおいて考えられる人々のグループに対する基準は、次の通りである。
(1)上記グループに伝統的に与えられてきた権利
(2)伝統的な方法において基本となる精神的及び物質的ニーズを満たすための森林への依存度
(3)経済的、社会的生活を持続させるための森林への依存度
(4)森林との融和
(5)森林内に居住することの喜び
 
6.認証の段階
 認証プロセスの目的は、持続可能な森林経営方式を継続して適用していくよう経営区に対し奨励処置を講ずることである。これらの段階は、その実績をさらに改善するために経営区を導くことを意味している。
 
6−1 経営区の認証に対し実績評価の段階
 認証の段階は次の通りである。
(1)レッドラベル:
これ波形得区の文書が必要条件を満たしていることを意味している。しかし、現地での実証では、最小限の保続的収穫量はまだ達成されていないことを指摘している。
(2)グレイラベル:
これは、文書が必要条件を満たしており、経営区は実際には択抜による森林回復方式を適用していることを意味している。しかし、保続的収穫、生態系及び社会的必要条件を一貫して満たすには至っていない。
(3)ブロンズラベル:
 経営区はSFMの必要条件を最小限度を満たしている。
(4)シルバーレベル:
 経営区はSFMの必要条件の大部分を満たしている。
(5)ゴールドラベル:
 経営区はSFMの必要条件を全て満たしている。
 
6−2 認証の合格ライン
 認証の各段階について、次のような検討事項に基づいて合格ラインが設けられる。
・当てられたSFMの実績目標を達成するために経営方法を調整するに必要な時間の長さ
・コンセッション所有者の経営区への監視方式の状況
・会議からの勧告

*1Mubarig Ahmad(1994)によって開発された定義によれば、その生産物が環境に与えた影響についての情報を与えるという考え方である。従って、消費者は購入時に生産プロセスの事情を理解した上で選択できるようになる。