ミャンマーにおける持続可能な森林経営のための基準と指標の策定
に関する説明的文書
 
ミャンマーの持続可能な森林経営のための基準・指標は、ITTOの最新版の基準・指標に基づいて策定された。現在の基準・指標は、2組の基準・ 指標の合併である。すなわち、一つは林業省(MOF)の職員によって作成されたもので、もう一つはFREDAによって準備されたものである。その理由は、 ミャンマーが熱帯国であるだけではなく、ITTOの木材生産加盟国の一つだからである。基準・指標を作成する際に、森林局(FD)、木材公社(MTE)、 林業省の計画統計局(PSD)、そして林業省のアドバイザーであるFREDA等の森林に関わる機関のすべてが参加していた。ミャンマーにおける森林関係の NGOであるFREDAもまた、ミャンマーの持続可能な森林経営のための基準・指標を準備し、FD、MTE、PSD、そしてMOFアドバイザーによって作 成された基準・指標を林業省に提出した。最後に、これらの2セットの基準・指標が一つに統合された。あらゆる団体によって多くの議論がもたれ、改善が適宜 行われた。さまざまな努力が行われ、国家の特色ある森林経営システムや施業が反映されたものになった。大部分の活動は、すでに実行されてきていた実際の活 動に基づいて策定された。しかし、基準・指標を適用するために実行すべきことは非常に多いと思われている。ある場合は、経営の明細事項がもっと記述されな ければならないことが非常に明白である。しかし、現在の基準・指標は、ミャンマーにおける持続可能な森林経営に向けた重要なステップである。必要に応じて 改訂版が作成されるであろう。
 
基準1:持続可能な森林経営を達成する条件
 
 この基準は、持続可能な森林経営を成功させるための一般的な制度的必要条件をカバーしている。すなわち、政策、法律制定、経済状況、インセンティブ、調査、教育、訓練、そして諮問や参加のためのメカニズムについて述べている。
 
 この基準は9つの指標から成る。指標の多くは必ず記述が伴っている。この指標を満たすための52の活動がある。
 
 この基準における大部分の活動は、政策、規則と規制、教育、ガイドラインなどの明細な記述、採択、そして実行とほとんど関係している。ある活 動は、実行の目標を表現している。また他の活動は、主要な活動の目的を支持するために作成されている。これらの活動を実行するために、すでに存在していた 国のニーズ、優先権、能力と一致している各活動に関して、経営の明細事項(パフォーマンス基準)が、閾値として記述されていた。まだ付加されるべきである 経営の明細事項は、やがてはミャンマーによって記述され、発展する可能性を有している。この基準において述べられているパフォーマンス基準は、ミャンマー の森林資源および経営システムの状態を反映している。
 
この基準において、指標、活動、そしてパフォーマンス基準は、ミャンマーにおける持続可能な森林経営を実現するための基本的な枠組みである。こ れらは、ミャンマーにおいて持続可能な森林経営に向けて前進するための森林経営の可能な条件を指し示すだろう。もし基準1が評価されるならば、ミャンマー の林業は、政策的、法律的、制度的な枠組みが十分であると言えるだろう。
 
基準2:森林資源の安全性と確実性
 
 この基準は、植林を含めて、生産、保護、生物多様性の保全、そして、その他の社会的、文化的、経済的かつ環境的な価値を、現代世代および将来 世代の増加するニーズを満たすために、安定した確実な森林状態を保っている程度と関係する。これは持続可能な森林経営にとって非常に重要なことである。
 
 基準2は、5つの指標から構成される。これらのうち多くが必然的に量的なものとなる。この基準において、指標を満たすための活動は20ある。
 
 この基準において、活動のほとんどは、天然林と植林地を評価し、建設し、区別することによって、永久林地の安定性と確実性を保証することが期 待されている。ガイドライン、規則と規制が、これらの活動に関するパフォーマンス基準として、また準備されている。パフォーマンス基準は、ほとんどが地 図、通知書、報告と記録である。RS/GIS/GPSの現代技術もまた、森林資源評価におけるさまざまなレベルでの森林蓄積調査とともに利用されている。 取り扱い説明書や手順もまた、パフォーマンス基準としての役割を担っている。
 
 この基準における指標、活動、そしてパフォーマンス基準は、森林資源の保全、システム的経営および利用のために重要である。保証された資源 ベースなくして、林業の持続性はあり得ない。森林政策、法律と規則は、森林資源ベースを確保し、達成する政策目標を高くするための手段である。すなわち、 保存林の面積を全国度面積261,266平方マイルの30%まで拡大し、保護森林システム(PAS)のもとで保護された民有林を国土全体の5%にする。長 期的には、ミャンマーはPASを10%まで増加することを意図してきた。現在では、永久林地(PFE)は18.63%を構成するが、保存林と保護された民 有林の面積は、48,614.33平方マイル(約14.9%)であり、それゆえPAS下の面積は約3.7%を構成する。森林局は804の保存林と83の保 護された民有林を形成してきている。
 
 
基準3:森林生態系の健全性と活力の維持
 
 この基準は、国家の森林状態と森林生態系の生物的機能の健全性と関係する。森林状態と健全性は、例えば、大気汚染、森林火災、洪水や嵐、そして虫害や病気など、さまざまな人間活動および自然現象によって影響を受ける可能性がある。
 
 この基準は5つの指標から成る。この基準において、指標は、質的および量的の両方である。その指標を適用するために要求される活動は13ある。
 
 この基準における活動は、人間活動および自然現象によって損害を受けた森林を見分け、位置を突き止めることを含む。ある活動は、森林に対して起こりうる被害や感染を防止したり、測定したりする手続きやガイドラインを適用することである。
 
 フィールド評価、視察、資源調査、記録や報告、ガイドライン、各法律や規則が、要求される活動を約束するパフォーマンス基準となる。
 
 この基準における指標、活動、そしてパフォーマンス基準は、健全な森林生態系の維持、回復、保全、そして増進のために必要である。
 
 永久林地が数量において増加している一方で、最適の蓄積をもって健全かつ活力のある森林を維持することが非常に重要である。永久林地における違法伐採は珍しくなく、時々起こっている。特に、より近づきやすい地域では、木材の過度の搾取が発生している。
 
基準4:森林生産物の継続性
 
 この基準は、木材生産および非木材森林生産物に関する森林経営に関係する。このような生産は、経済的に活気があり、環境的に健全であり、社会 的に受容されている時だけ、長期的に継続されうるものである。生産のために向けられた森林は、環境保護や生物多様性の保全など、森林の他の重要な多くの機 能を発揮することができる。このような森林の多面的な役割は、社会に対してさまざまな便益を発揮させるために、森林資源の潜在力を維持させる健全な管理施 業を適用することによって保護されるべきである。ミャンマーに関しては、森林生産物の継続性、特に木材生産は、国家経済の発展に貢献する意義から重要であ る。
 
基準4は10の指標から成る。この基準には、3タイプの指標があると見てよいだろう。資源評価のための指標、施業計画のための指標、そして経営のガイドラインのための指標である。これらの指標を適用する際には42の活動がある。
 
この基準において、ある活動は、将来の生産を予測する資源評価の方法や手段である。またあるものは、ガイドライン、手続き、教育の実行である。 現在の状態において効率的ではないマニュアルや規則などの改訂と見直しなども含まれている。ミャンマーが選択しているシステムのもとでは、国家森林資源調 査や収穫の規整および固定は、重要な要素に入っている。年間許容伐採量は、商業的に重要な種に関しては固定され記述されている。木材の収穫および他の森林 生産物は、年間許容伐採量によって規整され管理されている。
 
報告や記録、各施業の計画、教育、規則や規制、査定や資源調査は、この基準において記述されているパフォーマンス基準の中に入っている。 RS/GIS/GPSといった現代技術の適用もまた利用されている。森林経営計画は、再構築化され、現在は62の森林経営区に関して完結された。ミャン マーにおける森林収穫の国家規則もまた準備されており、林業省の許可を得て適用された。毎年の資源調査に基づいたチークおよびチーク以外の広葉樹の年間許 容伐採量の固定は、森林局の決まり切った仕事として取り組まれている。
 
この基準における指標、活動、パフォーマンス基準は、環境的にバランスを失うことなく経済的発展をめざすミャンマーにとって重要である。
 
基準5:生物多様性
 
 この基準は、生態系レベル、種レベル、遺伝子レベルの多様性を含む、生物多様性の保全と維持に関係する。種のレベルでは、絶滅の危機に瀕する 種を保護するために特別な関心が払われるべきである。代表的な森林生態系の保護地区における地理学的システムの確立と管理は、多様性の維持に寄与すること ができる。生物多様性はまた、木材生産のように他の目的のために管理された森林においても、適切な経営施業が適用されることを通じて保全されうる。PAS のもとで、自然公園、野生生物保護区域、自然指定保護地域の総数は33であり、国土全体の3.71%を占める。ただし、3.71%のうち1.45%は計画 段階である。
 
この基準は8指標から成る。またこの基準には5タイプの指標がある。生態系の多様性に関する指標、種の多様性に関する指標、遺伝子の多様性に関 する指標、経営のガイドラインに関する指標、そしてモニタリングおよび評価に関する指標である。この指標を適用するために総計23の活動が必要とされてい る。
 
この基準において、ある活動は、生物多様性の物理的、量的条件を記述している。またあるものは、絶滅の危機に瀕する希少な植物相・動物相や生息 環境を同定し、保護する方法である。そしてまた別の活動は、ガイドライン、手続き、法律、規則と規制、そして教育などの活動である。
 
絶滅の危機に瀕する希少な植物相・動物相や生息環境、省の教育指導、法律、規則と規制、報告と記録のリストは、パフォーマンス基準の中にある。
 
この基準における指標、活動、パフォーマンス基準は、ミャンマーにおける生物多様性の保全をさらに強化することになるだろう。
 
基準6:土壌および水資源の保全
 
 この基準は、森林における土壌と水資源の保全を取り扱っている。この基準の重要さは二重であることである。第一に、この基準は、森林の生産性 と質、そして関連する水上生態系を維持することとの関係がある(それゆえに、基準3の森林の健全性と活力とも関わりがある)。第二に、下流の水質と水量を 維持し規制する点で、また流水のピークを小さくし堆積を遅らせる点で、森林の外部において非常に重要な役割をする。自然災害や人間の干渉の結果もたらされ る地滑り、洪水、水質汚染等の環境的・社会的影響は甚大であり、その復旧方法には莫大なコストがかかる。ミャンマーの経済は、まだ農業に基づいており、そ のため、120以上の潅漑用のダムが最近建設された。森林局は、流域保全と復旧のために、重要なダムの極めて大事な流域を確定した。その結果、ダムの水源 涵養能力と他の機能および連結された貯水池が拡大され、すでに80のダムの重要な集水地域において確立された。1998-99年の終わりまでには約 84,260haとなり、同じ集水地域に、それ以外に134,890haの植林地が設定されることが予定された。
 
この基準は9指標から成る。ある指標は保護の度合いを示す。ある指標は保全と保護の手続きを示している。また別の指標はモニタリングと評価のためのものである。この基準には23の活動がある。
 
この基準において、ある活動は土壌と水を保全する地域を確定する。またあるものは、ガイドライン、手続き、コードなどの実行ある。また別のものは土壌や水に関する負荷を軽減する経営システムの適用である。
 
報告、計画、地図、ガイドラインと手続き、コード、教育指導、そして負荷軽減のシステムが、この基準におけるパフォーマンス基準である。パ フォーマンス基準の中で、森林収穫施業の国家規則、負荷軽減伐出、そして環境影響評価の手続きが、土壌と水の保全のために重要な役割を果たすであろう。し かし、ミャンマーの基準・指標においては、まだ開発途上にある系統的な環境影響評価の手続きが必要とされている。
 
基準7:経済、社会および文化的側面
 
 この基準は、基準4、5、6で述べられていることの他に、森林の経済的、社会的、そして文化的側面を取り扱う。持続的に経営されている場合、 森林は再生可能な資源として、国家の持続可能な発展のために大きく寄与できる潜在力を有している。ミャンマーでは、森林資源が国家の社会経済的発展におい て最も有力な役割を持っている。まだ国土の半分以上が森林によって覆われている。林業に携わっている総人口は189,000人であり、これは 1997-98年のミャンマーにおける総労働力の約1.03%である。林業分野のGDPは、1996-97年、1997-98年、1998-99年で、そ れぞれ2.7%、1.3%、1.0%であった。
 
この基準は16の指標から成り、2タイプの指標がある。経済的側面の指標と社会文化的側面の指標である。経済的側面では、ある指標は質的なもの であるが、ほとんどの指標が量的なものである。社会文化的側面では、文化的遺跡、使用者権利、慣習権の保護と高揚が、指標のための基本的な事実である。
 
この基準において、ある活動は、木材生産および非木材森林生産物に関連する経済的データの収集である。森林管理における地域住民の役割もまた、指標の中に述べられている。
 
報告、陳述、記録、教育指導、政策、法律と規制が、この基準において、いくつかのパフォーマンス基準となる。森林労働者、すなわち、植林労働 者、伐出労働者、製材労働者たちの健康・幸福状態に関する社会的活動が記録される必要があると考えられている。社会的活動の多くが、書類が提供されていな い森林局と木材公社によって、通常行われてきた。このような活動は、助成価格での米の供給、地域市場への輸送、森林ベースキャンプにおける健康管理、病人 を近くの病院へ運ぶこと、そして教育施設の提供および教師の派遣などを含んでいる。
 
この基準における指標、活動、パフォーマンス基準は、社会経済的状況および文化的側面を維持し、高揚させていくことを促進するだろう。