持続可能な森林経営のためのモニタリングシステムに関する研究
1999年度に関する最終レポート
 
1.はじめに
 
 ミャンマーは、持続可能な発展という面では、自国の森林資源を保護・保全・管理・利用してきている。ミャンマーでは、大小の2000以上の樹 種が記録されている。これらの中で、約400種は商業的に利用されており、この観点ではチークが最も重要な種である。日本の海外林業コンサルタンツ協会 (JOFCA)は、ミャンマーの森林経営、特にバゴーヨマ(Bago Yoma)地域のチーク天然林に関して明らかにするために、1997年8月からBago Yoma 森林の現地視察を始めた。1998-99年において、ミャンマーの森林局とJOFCAの間で合意契約が行われ、持続可能な森林経営のためのモニタリングシ ステムに関する研究が着手された。その重点は、持続可能な森林経営のための基準・指標の策定、試験および普及に置かれていた。その研究は、森林局と JOFCAの合意契約のサインによって1999-2000年においても続けられた。その研究の最終的な目標は、ミャンマーにおける持続可能な森林経営のた めの基準・指標の適用を決定することに関してマニュアルを開発することであった。
 
基準・指標を開発する際に、林業省のもとの関連機関、ミャンマーの森林に関連するNGOであるFREDAが参加した。基準・指標の適用性および適切性を試験することができるように、森林局はBago Yomaの西方におけるToungoo 県にモデル森林を設定した。その上で、持続可能な森林経営のための基準・指標の適用に関して、基準・指標の適用の範囲を評価するためにデータ収集が行われた。データ収集および基準・指標の適用の評価もまた、
ITTCの第26回理事会で採択された「持続可能な熱帯天然林経営のための基準・指標の計測マニュアル」で表現されている質問票に対応する活動として実行される。データ収集はBago Yomaの一部であるToungoo 県の森林経営体で行われた。持続可能な森林経営のための基準・指標の適用に関する評価手順は、Toungoo 県の森林経営体の森林経営認証のための最初の土台になると考えられた。
 
あらゆる関係団体の間における情報交換や情報普及が基準・指標をうまく適用していく際に重要な要素であると認識され、基準・指標および木材認証 に関するワークショップが、2000年2月にヤンゴンの森林局で開催され、関連団体がそのワークショップに参加した。ミャンマーの森林経営に関する JOFCAの森林局に対する協力は、ミャンマーの持続可能な森林経営の達成に向けて重要な貢献を果たしてきており、この点については実質的な前進がなされ てきている。
 
 
2.1999年度の間に着手された活動
 
2.1 持続可能な森林経営のための基準・指標の完成
 
 1996年、ミャンマーは、ITTOの持続可能な熱帯林経営のための基準(1992)、すなわちITTO's Policy Development Series No.2に基づいた持続可能な森林経営のための最初の基準・指標を改訂した。1998年、ITTOは、持続可能な熱帯天然林経営のための新たな基準・指標 を策定した。森林局は1998年末に、JOFCAの協力を得て、ITTOの1998年版の基準・指標に基づき、新たな基準・指標に改訂し最新のものを策定 した。林業省のもとの組織から一流の職員たちが基準・指標を策定する過程に参加した。FREDAもまた、別の基準・指標を準備した。そして、その2組が統 合された。次から次への議論と改善の後に、ミャンマーの基準・指標は1999年10月に完成し採択された。したがって、完成した基準・指標は、林業省と FREDAによって開発された2組の基準・指標が合併されたものである。
 
現在の基準・指標は、国家レベルでは7つの基準と78の指標を含み、森林経営体レベルでは7つの基準と73の指標を含む。
 
持続可能な森林経営は、国民の変化する選択に対応し、時空を超越して変わらない目標ではない。基準・指標は、定期的なモニタリングに基づき、計 測の手段は持続可能な森林経営に向けて前進する。持続可能な森林経営のための基準・指標は、定期的に改訂されアップデイトされる必要があるであろう。
 
基準・指標を満たすために217の活動が森林経営体レベルで着手されている一方、国家レベルでは257の活動がある。これらの活動は、数におい て多すぎると考えられており、それゆえ、じっくり調査した上で改善されるであろう。ミャンマーにおける持続可能な森林経営のための基準・指標の作成は、さ まざまな専門分野の非常に多くの専門家によってなされてきたが、ミャンマーの基準・指標は、フィールド実験や適用性の新しい知見に基づいて、訂正されアッ プデイトされる必要がある。この点では、JOFCA、ITTO、FAO、CIFOR、WWFなどからのミャンマーの基準・指標に対するコメントはおおいに 歓迎される。現在の基準・指標に基づいて、森林経営認証のためのミャンマーの基準・指標も、マレーシアにおいて行われたのと同様に、考え出され得るであろ う。それに加えて、経営の明細事項(パフォーマンス基準)もまた、再吟味される必要があるだろう。持続可能な森林経営を確実にするために、ミャンマーは、 林業界に受け入れられ、明細事項のある十分な経営施業を示す必要があるだろう。
 
2.2 ミャンマーの基準・指標に関する説明的文書の準備
 
文書のタイトルが意味しているように、ミャンマーの基準・指標に関する説明的文書は、ミャンマーにおける持続可能な森林経営の基準・指標がどのように誕生したのか、またどのように必要な活動が作りあげられたのかを明らかにする。
 
ITTOの生産加盟国であるミャンマーは、1992年に提案されたITTOの持続可能な熱帯林経営の基準にならって1996年に最初の基準・指 標を策定した。1998年にITTOは、環境と社会的側面をより重視して、基準・指標を最新化させた。その1998年に提案されたITTOの熱帯天然林の 取り扱い方の改訂版に伴い、ミャンマーは再び、ITTOの新たな基準・指標にならって、1998年末に1996年の基準・指標を改訂した。
 
持続可能な森林経営のための基準・指標の新たな策定において、ミャンマーはITTOによって1998年に改訂版の中で提案されたものと同様の基 準・指標を確立した。ITTOの基準・指標は、熱帯天然林の持続可能な経営を満たすために、幅広い範囲と包括的な要素をカバーしていると感じられる。しか しながら、各指標を満たすために要求された活動を決定する際には、ミャンマーの森林経営システム、森林の条件、森林タイプ、社会的文化的側面、そしてその 他特別な国の条件に基づいている。
 
各すべての活動のための経営の明細事項(パフォーマンス基準)に関連して、1856年以来実行してきている積年の経営システムのために、ミャン マーは、すべての主要な活動や主要な施業にとって十分に多くの基準を有してきている。しかし、環境的保全に関して、環境影響評価のガイドラインや手続きな どのように、いくつかの補足的な基準は、現代の環境保全における概念と原則を反映させるために、まだ開発されるべきである。
 
社会および地域共同体の健全状態に関しては、保存林の中に地域提供作業範囲や禁入地域が設定され、この目的に応じて管理されている。さらに、他 のアジアの人々と同様に、文化的礼儀作法や地域住民に有益な多くの活動を尊重しているミャンマー人は、証拠資料がなくても、あるいは、部局の教育指導や処 方箋がなくても、ふつうに実行している。それゆえ、ミャンマーは、すでに森林施業の中で取り組まれてきている社会的活動のための部局の教育指導と手続きを 発行する必要があると思われる。これらの教育指導と手続きは、パフォーマンス基準として利用できるだろう。
 
2.3 国家レベルおよびトングー県(Toungoo District)の森林経営体レベルにおける必要なデータの収集、そしてフィールドテストを通じたデータの完全性の評価
(the ITTO Document ITTC (XXVI) Rev.1:タイトル「持続可能な熱帯天然林経営のための基準・指標の適用のためのマニュアルに関する専門家パネル報告」に対応して)
 
 森林局は、「持続可能な熱帯天然林経営のための基準・指標の適用のためのマニュアルに関する専門家パネル報告」(これはITTOの文書 ITTC (XXVI)/7 Rev.1である)に対応して、「最初の枠組み」を作成した。最初の枠組みは、 ITTC (XXVI) 7 Rev.1によって助言されているように、基準・指標の適用の評価のために準備された。表には、経営の明細事項、その特性、重要レベル、承諾レベルが記述されている。
 
最初の列には、対応している活動のための経営の明細事項が、すでに作成されたミャンマーの基準・指標から引用される。2番目の列には「特性」が 入り、そこには、その活動が十分に実行されているかどうか、またその活動の目的が十分に達成されているかどうかが記述される。3番目の列には「重要レベ ル」が入り、1〜3の間で評価される。例えば、収穫計画の準備のように、もし活動や行動が非常に重要であれば、そのスコアは最高の3となるだろう。一方、 例えば訪問者帳簿の提出のように、その行動が難しいものではないならば、そのスコアは最低の1になる。それゆえ、活動を評価することは、当然その活動の重 要性に重きが置かれることになる。最後の列は、「特性」の列と直接関わる「承諾レベル」が入る。それは、参考資料(事務所における調査:ガイドライン、手 続き、報告、議事規則、部局の教育指導、規則と規制、処方箋、地図など)もしくは証拠(現在における調査:現場視察、フィールドテストなど)、あるいはそ の両方によって、活動の達成度が評価されるであろう。特性に依存して、承諾のレベル(4番目すなわち最後の列)は0〜5ポイントの間で評価されるであろ う。
 
各指標は80%の評価点が必要であり、その指標が記述された経営の明細事項と十分に一致して実行されて、合格し、受け入れられることになる。経営の明細事項は、森林経営体における団体によって規定され、持続可能な森林経営を達成する閾値が考慮される。
 
表の例は以下の通りである。
 
基準5:生物多様性
 
経営のガイドライン
 
指標 5.8 経営ガイドラインの存在および実行
 
活動 (A)各木材生産林が掻き乱されていない状態を維持している
 
  掻き乱されていない木材生産林      重要レベル      承諾レベル
  のパーセンテイジを決定する
 経営の明細事項     特 性        2
 
 
       合  計
 
  注意:重要レベルは1〜3の点数、承諾レベルは1〜5の点数である。
 
 
 合意契約によれば、森林局はITTOのマニュアルITTC(XXVI)によって表を完成させなければならない。表を完成させるために、森林局 は、ミャンマーにおける持続可能な熱帯天然林経営のための基準・指標の適用マニュアルの開発のための「最初の枠組み」を作成した。必要な情報とデータは、 事務作業とフィールドワークによって収集された。そこで初めて、基準・指標の適用が監視され評価され得た。現場視察はまた、選ばれた森林経営体で行われ た。この特別な実習において、Toungoo District(県)という森林経営体が選ばれ、たくさんの現地調査が比較のデータ収集のために行われ、フィールドレベルにおいて関係各位による意見交 換がもたれた。
 
ミャンマーにおける持続可能な熱帯天然林経営のための基準・指標の適用のために策定された最初の枠組みは、実質的に完全される必要がある。その 枠組みを改善する際に、第一段階はミャンマーの基準・指標の活動および経営の明細事項を再吟味することであろう。活動は、あるものは現在着手されているも のであるべきであり、またあるものはもう少し努力を加えたものにできるであろう。近い将来もしくは森林経営認証のために評価する時には要請されないであろ う活動は、取り除かれるべきであり、もしくは改訂されるべきであろう。森林経営認証の目的のために、現在用いられている、あるいは、少し努力を加えて適用 できる他の基準・指標が、まず策定されるべきである。それから、必要な経営の明細事項が、閾値の基準として用いられるために補足されるべきであろう。その 後で、森林経営体レベルで、基準・指標の適用および有効性を観測し評価するために、事務調査およびフィールド視察が行われるのであろう。そこで初めて、す でにJOFCAに委託されている最初の枠組みが、完成されるのであろう。あらゆる利害関係団体の参加が、基準・指標の適用および森林経営認証プロセスを成 功させる上での鍵となる。
 
本質的に、持続可能な熱帯林経営のための基準・指標の適用のために、ミャンマーのマニュアルを作成したことは、植林に関する補足的な基準・指標 の適用を傷つけることなく、持続可能な森林経営を確実に達成することに向けて、さらに森林経営認証のプロセスをうまく実行することに向けて、重要な貢献を 果たしたと考えられている。
 
2.4 訓練・教育および情報普及のための基準・指標および森林認証に関するワークショップ
 
持続可能な森林経営のための基準・指標に関する地域のワークショップが、JOFCAと森林局の間で交わされた合意契約に沿って、2000年2月 21・22日にヤンゴンの森林局で開催された。このワークショップは、2つの団体によって共同で組織され、45名の関係者がワークショップに参加した。参 加者は次の団体からの職員を含んでいた、森林局(FD)、木材公社(MTE)、林業省の計画統計局(PSD)、FREDA、ミャンマーの木材商業協会であ るForest Products J.V.、そしてJOFCAである。半島マレーシアの森林局副局長(Deputy Director-General of Foresry, Forestry Department of Peninsular Malaysia)もまた、話題提供者としてこのワークショップに参加した。さらに、国家木材認証協議会(NTCC)議長の Freezailah binChe Yeom 博士が、林業省大臣の招待によってミャンマーを訪問しており、ミャンマー滞在の特別ゲストとして参加した。オランダのWageningenURSの Institute of Forestry and Nature Research の教授で、マレーシアにおける木材認証プロセスの発展のための特別ワーキンググループのメンバーでもあるW. Herbert Diemont 博士も参加した。
 
ワークショップでは7つの話題提供の論文が発表され議論が行われた。JOFCA運営委員会のメンバーであり、林政総合研究の上級研究委員である藤沢秀夫博士は、"Sustainable Forest Management and Related System" に関して発表した。半島マレーシアの森林局副局長のThang Hooi Chiew 氏は、"Malaysia's experiences on Criteria & Indicators for Sustainable Management and Timber Certification" を発表した。FREDAの議長であるU Sein Maung Wint氏は"Some Salient Points for Timber Certification Process"について、森林局の総局長代理であるU Shme Kyaw 氏は"Assessment of C&I Application at Toungoo Forest Management Unit"について、ミャンマー木材公社の伐出局・局長代理のU Tin Htun Aung 氏は"Sustainable Forest Management and Implementation Measures for Chain of Custody in Myanmar"について、森林局のU Saw El Dah 氏は、ミャンマー木材認証委員会議長のU Myat Thinn の代わりに、"Timber Certification : National Endeavours and the Way Forward" について発表した。またJOFCA運営委員会のメンバーであり東京大学助教授の白石則彦博士は、"Japanese Experience about Forest Certification" について発表した。
 
ワークショップの2日目の最後の日には、2つの作業ワーキンググループが、ワークショップの推奨のためにつくられた。
 
 
主な参考文献は以下の通りである。
 
参考文献
 
1. To enhance transparency of the applicability of C&I nationally as well as internationally.
 
2. To provide national level training on C&I so that implementation may be better harmonised, more effective and speedy.
 
3. To contact Forestry Education Institutes and relevant institution so that they may get interested and eventually incorporate the issues of C&I as part of their curricula.
 
4. To pursue the field assessment to apply the currently adopted C&I and review its applicability in the process of assessment.
 
5. To maintain and strictly follow the prevailing Departmental Instructions, Standing Orders, Management Plans, Code of Forest Harvesting, etc. as standards of performance.
 
6. To assess the applicability of C&I Myanmar at the National and FMU levels concurrently.
 
7. To carefully study or review relationship between C&I for SFM and Forest Certification.
 
8. To encourage national institutions to do research work on the subject to assure further development as the C&I for SFM for Myanmar is still in the early stage.
 
9. To review, as necessarily, the current C&I for Myanmar in light of changing situations and applicability, in particular, the standard of performance.
 
10. Revise code of forest harvesting as necessary.
 
11. Review the present C&I to be suitable for Timber Certification.
 
12. To explore ways and means for funding to participate in Timber Certification Assessment in Malaysia.
 
13. Develop and test 1&2, improve, finalise, then conduct training.