和歌山県    
  県木:ウバメガシ
Quercus phillyraeoides
県花:ウメ
Prunus mume
 
杜(森)の話    
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奥熊野の門松&正月
本宮町では、カドマツというよりカドカザリ(門飾り)にシイノキ(Castanopsis sieboldii)を使うとのこと。真っ直ぐに伸びた枝ぶりのよいシイノキを飾ることによって家が栄えるということで、山には入る際にはいいシイノキを捜していたとか。

門に2本シイノキを置き、サカキ(Cleyera japonica)を添えます。2本のシイノキの間に縄を引き渡し、ミカン、串柿、ユズリハ、稲穂を吊します。

カドマツのシイノキをくくる杭は、シイの棒で、ユズエとか、イズイサマと呼ばれていて、上半部は皮を剥ぎ、一番上の頂部には十字に鉈目が入っています。

そこに、大晦日のご飯、正月の雑煮、7日は七草粥、小正月にアズキ粥をのせます。その間、米や大豆を振りかけます。

そして、そのユズエは他のお飾りと一緒に納めたり焼いたりします。どんど焼きの風習でもあるんですね

「ワカヤマへ行く」(和歌山じゃなく若山だと思う)というのは正月になって初めて山に行くこと。2日かと4日とかその集落によって違うとか。中辺路町では、アシガルと呼ばれる紙の幣を作ってその両端に床に飾っていた三宝の米と大豆をくるんでトビをつくり、別にミカンとカキを持って山に入ります。アシガルを、木の枝にかけ、カキとミカンは最初に切った木の株にのせて、山の神に供えます。

伐った木を束ね、その上に枝葉の付いたシバを持って帰るんだそうです。このときのシバ、5月のワサウエ(初田植)の昼食を作る際に用いたり、次の正月の餅を作る年の暮れにもち米を蒸すのに利用したそうです。

冬は山に、サクラが咲くとともに里に下りてきた神様。お米が無事収量を得るためには神様の力も必要。そんな気持ちが込められているんです。


しかし、1月15日の休日を動かしたのは何を考えていたんですかね。3連休が必要というより、こういった風習を守るのも国として、民族として、文明として大事だと思うのですが、自然への感謝の儀式でもある小正月。ダメにしてよかったんですかね。民主党は日本の基盤文化の破壊を目指しています。ちなみに、自民党は反対。良識のある?政党ですね。

 
シバマキ
山の人が吸うタバコのこと。タバコの葉を刻んだモノをツバキの葉でくるんで吸うんです。シバは木の葉のことを指す方言で、シバタバコともいうそうです。

文学的には「椿の葉巻」とも呼ばれます。場所によっては、カシの葉を利用したそうです。ちなみに、フィリピンではナスの葉をマレーシアのサバではヤシの新芽の芯をグアテマラでは、バナナの葉を使っていました。


 
ワンワン紀州犬
紀州犬は、紀州半島一帯で狩猟用に飼われていた犬。「熊野犬」、「日高犬」、「那智犬」、「太地犬」と場所によって呼び名が違ったのですが、昭和初期に天然記念物に申請する際に呼び名を統一したとか。

紀州の猟は、一銃一狗(いちじゅういっく)と呼ばれる一丁の銃に一匹の犬で行うということ。紀州犬の特徴の一つに、勇猛果敢、沈着冷静はこの猟のスタイルと密接。

紀州犬の伝説
山に住む弥九郎という猟師が、山道で苦しんでいるオオカミと遭遇、そして介抱したんだそうです。オオカミは、その恩返しに在来種の犬との間に子をもうけ子犬を弥九郎に渡したそうです。子犬の名をマンと呼び、それはそれはすばらしい猟犬になったそうです。
紀州犬のルーツといわれているとか

僻地ということで、他の種との接触が無く、純血状態ということで、天然記念物扱い。他には、中国帰りの空海を高野山に導いたのも紀州犬だったとか
 
ウバメガシとウマメガシ
備長炭といえば、姥目樫。なのに、馬目樫と標記が。学名は同じQuercus phillyraeoides

これはウバメガシの葉が馬の目に似ているとのことで別名。犬目樫と言うこともあるそうです

しかし、問題がないわけではありません。本来の紀州備長炭は、ウバメガシやアラカシの炭だけではなく、ツバキやクヌギ、その他のカシノキも含む雑木炭だったんですが、勘違い料理人&炭焼きし易い理由で技術のない炭焼き職員(職人ではない)の影響で、山がおかしな事になっているんだそうです。ウバメガシ以外は、料理で使わない。→ウバメガシからしか炭を作らない。いや作れない。→技術の必要な雑木の炭作りが放置される。といった事態に・

30〜40年のサイクルで作られる炭。
山の若返りのためにも、ウバメガシ以外の炭を流通に乗せれるようにしていく必要があります。山を健全にするには、里の人の力が必要ですからね。

この炭焼き技術を伝えたのも弘法大師空海だそうです。


 
家の周りの天然林
熊野の話

植林の歴史のある熊野。土地さえあればスギ・ヒノキの植林というわけではなく、ちゃんと環境に配慮した林業をしていたんです。

人が住んでいる周りは天然林。植林地は人里離れたところ。家の周りの畑の肥料は天然林からの緑肥。煮炊きの薪も天然林。山菜にキノコも天然林


日なたになる山にもスギを植えない。なぜなら乾燥して育ちが良くない。獲物の餌が育たない。ということで、棲み分けしていたんです。


 
小石でラブレター
「恋しに待つ」というわけで、小石に松の葉を結んで相手に渡す風習が和歌山のどこかに残っているとか。
小石が恋しで松が待つ

平安時代では、男の方が好きな女性の家の玄関に夜中にこっそり置いたんだそうです。
返事が来るまでひたすら置くんだそうです。1000個置いてもダメならあきらめたとか。
(1日1個として約3年もかけてだめならね)

植物の言葉遊び
優雅です。


 
和歌山蜜柑は鞠から
西条八十(さいじょうやそ)は、明治25年〜昭和45年(1892〜1970年)は東京出身の仏文学者&詩人。
「鞠と殿さま」という童謡の作詞家。昭和4年、早稲田大学の助教授時代に発表。

てんてん手鞠 てん手鞠
てんてん手鞠の 手がそれて
どこから どこまでとんでった
垣根をこえて 屋根こえて
おもての通りへとんでった とんでった

おもての行列 なんじゃいな
紀州の殿さま お国入り
金紋 先箱 供ぞろい
お駕籠のそばには ひげやっこ
毛槍をふりふりやっこらさの やっこらさ

てんてん手鞠は てんころり
はずんでおかごの 屋根のうえ
『もしもし 紀州のお殿さま
あなたのお国の みかん山
わたしに 見させて下さいな 下さいな』

お駕籠はゆきます 東海道
東海道は 松並木
とまり とまりで 日がくれて
一年たっても 戻りゃせぬ
三年たっても 戻りゃせぬ 戻りゃせぬ

てんてん手鞠は 殿さまに
だかれて はるばる 旅をして
紀州はよい国 日のひかり
山のみかんに なったげな
赤いみかんに なったげな なったげな


だそうです。ちなみに作曲家は中山晋平
 
薪炭林と梅
田辺市やみなべ町の梅林の周辺に薪炭林のゾーンを作っています。梅の栽培地は、表土がむき出しになるので、土壌流亡や水土保持能力が弱くなります。でも、周囲に森林を持つことで、リスク回避になります。しかも、薪炭林なので、伐っても根が残ります。萠芽更新だからです。
このため、冬はウバメガシがメインの薪炭林から炭作り、夏は梅栽培と季節を分けて、生計を維持してきたんです。

江戸時代に、田辺藩が急傾斜地の利用に関して免税したこともあり、梅作りや備長炭産業を奨励した背景があります。そこに、大量の雨量が降る地なので、どうすれば梅畑を守れるかの結果です。

ついでながら、薪炭林地帯は、広葉樹林でもあり、日本ミツバチの住み家なのです。このため、梅栽培に必要な受粉作業というか、ミツバチにとって必要な蜂蜜を集めるために梅畑を利用するというか、持ちつ持たれつの関係です。


 
伊豆大島の家は熊野産木材
 江戸時代の話ですが、伊豆大島の家は、三重・和歌山産の熊野材で出来ていたんです。
理由は、大雨で山が崩れたり、増水して丸太が流され、その後、黒潮に乗って流れ着いたから。

 通常は、熊野林業で生まれた木材は、筏師によって、新宮の川原で伐出業者や問屋、山持ちの木主に渡されるのです。でも、増水の結果、流木とか、流難材と呼ばれる人の手から逃げていくのです。

 江戸時代は、勝手に処分することは許されておらず、村役人に届けて処分していました。明治時代は、地元の材木業者、昭和に入ると木材協同組合や、地元の流木防止協会が対応したとのこと。川の湾局部に、富士蔓と丸太を長く繋いで、材木を留めていたそうです。その後は、ワイヤーロープになるのですが。

 丸太には、刻印が打っているので、そこで確認していたのです。しかし、海に流れた丸太は回収できずに流れるのですが、木主の名を受けた担当者は、刻印を持って伊豆大島に渡ります。

 海岸に流れ着いた丸太にある刻印を確認して、現場で売却していたのです。経費はかかるので、利益は通常の3〜5割ほどだったそうです。

 流木を拾って家を建てていたんです。もちろん、お金を払ってです。もちろん、刻印のないのは、持ち主が証明できないので、無料で使うことにはなるんですけど。