水害防備林 荒川

荒川は、福島県福島市の南部を西から東に流れる阿武隈川水系の一級河川で、名前の通り、荒れる川、洪水多発の川として有名です。

吾妻連峰高山の西に位置する鳥子平に源に、一切経山や東吾妻山、鉄山といった福島盆地西側の山々を水源とする支流を合わせ、福島市御倉町で阿武隈川に合流します。流域面積は76.3km2、流路延長は25.5キロです。上流域は、火山と関わりのある安山岩と火山砕屑物であるため、崩壊しやすく、大雨の場合、大量の土砂が流出するのが特徴です。このため、洪水を避けられない川であるため、流路は常に変わっており、今の阿武隈川の合流地点は、須川であったそうです。大森川の流路がちょっと前の流路だったそうです。

記録によると、万治2年(1659年)から宝暦10年(1760年)には、治水工事として荒川水林として、堰堤、植林が為されたということです。最初は堤防で、次に植林というのが流れのようです。植栽樹種は赤松(上流部や川に面したところ)で、部分的に、スギやケヤキ、コナラ、エゴノキ、ホオノキ、カエデで構成されています。設置しても、何度も洪水で流され、石積み、堤防を失っては修復の繰り返しでした。

 文化9年(1812年)にも、庄野村が左岸の入会地である筋川原地に、水防林の設置を願い出ていたりしています。しかし、右岸の上名倉村と下村は、翌年の文化10年(1813年)に反対声明し、拒否しています。左岸の庄野村側が洪水対策の機能が強化されれば、右岸の2村が被害を受けるわけですから。

 また、天保5年(1834年)には、水林を手放すが、水害防備林として、あなたには売るけど、伐ってはダメよと条件付けで売っています。当時は天保の大飢饉の真っ最中でしたから、資金繰りで手放したと思われます。この地は、領主が色々変わる場所だったそうですが、水害防備林はずっと守られてきました。また、理解されてきたのです。時が変わり、明治36年に、水害防備保安林に指定されました。

現在、水林のうち、27.0haが、水害防備林に指定されいるとのこと。1992年時点で、100haの水害防備林になっていますが、昭和21年(1946年)の米軍の写真によれば、118haと、徐々に減少しています。






なお、荒川は水質が良いことでも有名で、東北一の名水だそうです。

水林公園には、洪水時に被害を軽減する霞堤が残っています。川の両側で、霞堤の高さを巡って、争いが絶えなかったそうで、明治の末には、相手側の堤防を破壊して揉めた後始末の石碑があります。大正4年(1915年)に建てられたものです。



上:荒川(あずまこうえん橋より上流)
下:荒川(あずまこうえん橋より下流)



水林(水害防備林)です。


水林内に残っている霞堤。増水時の流れに面する方に大きい岩を配置しています。



江戸時代に作られたもの。


水林の樹種構成ですが、スギでした。ただし、これは、小富士橋より下流です。
「四季の里」付近は、流れも小富士橋上流より弱くなるのか、スギで対応可能だったようです。小富士橋上流は、増水にも対応可能な赤松を植栽していました。

赤松は、別名「雌松」と呼ばれます。女性は芯がしっかりしていて強いから、風や流れに耐えられる松と言うことで、赤松を使うのです。黒松は、雄松と言われますが、見かけは立派だけれど、ポッキと折れるので、水害防備林には使えないと、江戸時代に書かれた静岡の「百姓伝記」に記載されています。

この赤松林は、土石流を防ぐためと勝手に想像しています。
ちょうど、扇状地の扇頂部に位置します。


いろいろ学べる「荒川資料館」
福島市地蔵原水林自然林
電話:024-593-3525
開館時間:10:00-16:00
休館日:年末年始


水流の強さにあわせて、樹種の配置。
聖牛や木流し用の備蓄にスギを植えたと勝手に想像しています。

水防道具 これらの道具を使って霞堤を築きあげました。
-管理の歴史-
昭和30年代までは、大正14年設立の庄野水害予防組合が管理。庄野地区住民約100名で構成
堤防や水防林の管理、洪水時の水防活動。水防林の管理とは、共同での間伐、下草刈り、蔓切り、木の伐採と販売、その後の植林を行っていた。水防活動時には、木を伐採して木流しを実施。堤防を守った。
昭和40年以降は大きな氾濫がなくなり、昭和54年に水防林の大部分を福島県営の「あづま運動公園」に売却し、組合は解散。
共有地と残っている水防林も管理放棄の状態。
右岸の新井地区の地蔵原の水林自然林は、昭和48年に保健保安林に指定。昭和47年に国有林であったのを福島市が購入。
昭和54年に14haがレクリエーションとして市民に下方。その後、林務地籍課の管理の後、森林の管理作業を福島森林組合に委託。


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