戦争の陰で
海戦
戦争で森が無くなる事は昔はありませんでした。森林の質が落ちる、巨木が無くなるということはありましたが。
しかし、戦争するたびに森林から使える木はなくなっていきました。その後人が入り農業や放牧をはじめ、丸裸になってはゆくんですが。。

古い文献をひもとけば、トロイア戦争。ギリシャの都市連合軍は、トロイアに攻め込むのです。トロイの木馬は有名です。でも海を渡らなければ攻め入ることは出来ません。造船するために大量の木が切り出されたんです。

地中海を挟む戦争。ペルシャ対ギリシャ、サラミスの海戦(紀元前480年9月28日)、ローマ対カルタゴ、ミレー海戦(前260年)、ドレパヌム沖海戦(前249年)、エクノムス海戦&チュニス決戦(前256年〜前255年)、ローマ対エジプト、アクチウムの海戦(紀元前31年9月2日)、イスラム対キリストとの戦い、レパントの海戦(1571年10月7日)、プレヴェザの海戦(1538年9月28日)、。大英帝国対フランスのナイルの海戦:アブキール海戦(1798年8月1日)

大陸対大英帝国との戦い。仏vs英のラ・ロッシェルの海戦(1372年)、西vs英のアルマダの海戦(1588年7月)、蘭vs英のポートランド沖海戦(1653年2月28日〜30日)、仏vs英蘭ビーチ・ヘッド沖海戦(1690年7月10日)、英vs仏トラファルガー海戦(1805年10月21日)。

日本にとって危機だった元寇。文永11年(1274年)10月3日の文永の役。蒙古軍は、日本に攻め込むために大量の船を用意しました。対馬海峡を渡るためです。このときも大量の木々が切り倒されたそうです。朝鮮半島で。一時、朝鮮半島に森がないのはこのときに木を伐られたからという説もあったくらいです。

大量の船を支えたのは大量の木材。スェーデンでは、木材を出す方の国。だから木は徹底的に管理されました。勝手に伐ることが出来ないようにしたんです。フランスは、林業家に勝手に木を伐る権利を奪いました。自由と博愛、平等の国なのですが。国を守るとは、国民を守るとは自由を謳歌するためには規制もあるということなのでしょう。


ベトナム戦争
豊かな南ベトナムに貧しい北ベトナムが挑んだ戦争。資本主義対社会主義。アメリカ対ソビエト。軍需産業の一人勝ち。結果的にはアメリカを頂点とする資本主義の価値。振り返ってみれば、よく分からない戦争ともいえます。でも、ベトナム人、アメリカ人はもちろんベトナム・ラオスの大地にも傷を付けました。

ホーチミンルートはラオスの中にあった道。ベトナム国内には作らず他国を使って無事に輸送しようとしたんです。だから米軍はラオスとベトナム国境付近に大量の爆弾を投下。森が無くなるというわけではありませんが、不発弾は大量に残っています。木々の中には爆弾の破片が残っています。

そして、このホーチミンルート。森の中の道。空からの発見は無理。だから森をなくせばいいと、枯れ葉剤作戦に繋がっていくのです。輸送隊の発見はもちろんですが、山の斜面を迫ってくるベトコンを退治するためには、遮蔽物の撤去。すなわち、木の撤去だったんです。
山の斜面すべての木々が無くなったわけではありません。北斜面や山の稜線です。ベトコンの侵入を防ぐためです。このため、戦争が終わっても枯れ葉剤の影響で木は育たないという状況が続いたんです。

そしてこのインドシナを巻き込んだ戦争は、共産党を図に乗らせたんです。ベトナム戦争の後方支援がタイ。この国を共産化してしまえば、アジアに共産主義国家がもっと誕生。いわゆるドミノ理論。
だから、共産ゲリラ、工作員を送り込んだのです。タイだってバカではありません。このときの対抗策が、東北タイ地方に人を住まわせたのです。メコン川のタイ側の森を切り開き、農業をしながら人を住まわせ、監視させたのです。もちろん貧困対策もあったのでしょうが、それまで貧弱な土地として利用されなかった森が使われました。結果的には塩類集積を起こし、使えない土地に。
ここにユーカリを植えるのですが、これはユーカリ騒動に発展。ユーカリは悪だと。。。今は、一生懸命農民も植えています。お金になるから。

軍資金
クメールルージュ政権。カンボジアに誕生した狂気の政権。なぜ、こんな政権を支援したのか
1953年にシアヌークによってフランスから独立。1970年にアメリカによるクーデターでシアヌークは北京に逃亡。理由は、ベトナムが統一されるとカンボジアが占領されるので、南ベトナムを弱体化するために北ベトナム(共産圏)に補給基地を提供してアメリカの怒りを買ったから。ロンノル政権が誕生するんですが、これがバカ。国民に重税をかけるんです。でシアヌークはポルポトと手をくんで、ロンノル政権を打倒。1975年のこと。
1978年の3年間で300万人の虐殺。国民の1/3に相当する数です。その後、ベトナム軍の侵攻で悪夢から解放されるのですが、しかし内戦が続くのです。
で、このときの軍資金は、ルビーと木材。大量な木が伐られ売り飛ばされたのです。

今は伐る木がないということ。

似た例は、フィリピンにも。
日本の左翼主義者が応援したというNPAこと、新人民軍。共産党(毛沢東思想による)革命のための軍隊なのです。まぁ、腐敗したマルコス政権と戦うというイメージでもてはやされていたんですけど。でも活動資金がなければ単なる物盗り。お金稼ぎに木をバッサバッサ伐ったんです。


難民キャンプ
戦争から逃げてきた人達が命をとどめておく場所。それが難民キャンプなのです。そして内戦の起きている国の周辺には数多くの難民キャンプが存在します。生きるためには、煮炊きが必要。そのため、周りの木が次々と伐られていくんです。煮炊きのため、暖房のため。だから内戦が終わったあと、難民キャンプのあとには荒れた大地が。

難民キャンプが出来る前まで住んでいた人達はそこそこのバランスの中、暮らしていたんです。でも、難民が去ったあとには、バランスが崩れた生態系の中で、燃料としての薪がとれなくなったのです。

戦争の陰で
きこりのホームページ http://www.kikori.org